はじまりの夜

はじまりの夜

保護者からの寄稿

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 「中入試、希学園に決めたよ」ある晩、妻が決定事項としてそう伝えてきた。克己心をキーワードに人としての成長も重視しているところが気に入ったらしい。…いやいや、何言ってるの? 灘中や東大寺学園中を目指すスーパーエリート塾?
 30年前の自分の中入試と重なる。当時自分も灘という日本で一番の学校があると知って、親にそこを目指すのはどうかと聞いたのを覚えている。そんなの特別な子の行く所よと一笑に付され、結局近所の塾に入った。必死で頑張ったが頂点にはほど遠く、それでも地域の難関中学と言われる処に入り、勉強をしたり大根を育てたりお経を唱えたり、なかなか素晴らしい学生生活を歩んできたように思う。
 息子も僕と同レベルくらいを狙えれば言うことないな。そう思っていた。なのにそんなレベルの高い塾に行ってどうしようというのか。鶏口牛後と言うではないか。学問は苦行に感じるようでは伸びず、楽しくなくてはならない。きっとそんなエリート揃いの塾に入れば息子は楽しいどころか辛い思いをするんじゃないかなと心配した。結局ついて行けなかったら再考することとして希学園生活がスタートした。
 机の上の勉強は、それまで某大手算数教室と学校の宿題、漢検のドリルくらいだったので序盤は少しずつ様子を見ながらスタートしていくことにした。
 前半はまあまあ時間があったので、入塾以前からのライフワークとして実体験を重視して実験を行ったり、地層や石を眺めに行ったり科学館や天文台、歴史的建造物を訪問したりして過ごしていた。カブトムシを飼育し大量増殖した幼虫を並べ冬越しの仕方を説いたりした(にも関わらず彼は公開テストでカブトムシの冬越しを間違えた)。また子どもの教育にどうしても必要であると妻に懇願し、大きな水槽をリビングにおいてもらったりもした(熱帯魚が趣味なのだ、僕の)。
 入塾序盤での僕のポジションはライバルだった。本人も僕も新旧問わずボードゲームが大好きでよく対戦していたが、やはりゲームにはライバルがいないと楽しくない。息子のときはいわゆる新型感染症の感染拡大期でオンライン授業を受ける機会も多かったので、一緒に授業を受け、息子はノートをとり僕は先生の似顔絵を描いたり、競争して問題を解いたり、試験問題を持って帰ってきたらとりあえず全部解いてお互い比べ合ったり気になる所を話し合ったりと楽しく物事を進めることができた。もっとも終盤には僕は完全についていけなくなった。初めての灘中の過去問を解き、息子はなんとか合格点を取れたようだが僕はその半分以下…ビール飲んでたからね、ということにしておいたが、圧倒的に時間が足りなかった。いや、考えれば答えにたどり着いたかもしれない(?)が間違ったやり方を伝えてしまう可能性が高く希学園の講師陣に全面的にお願いせざるを得ないなと実感した。もっともその頃にはすでに希学園での松田先生はじめ先生方とのやり取りを楽しみに家では何も言わなくても黙々と勉強に打ち込むようになっていた。ライバルを失職した僕は、その後は家事手伝いとして余生を過ごすことになった。なんだかんだで息子は先生方のサポートのおかげで辛い思いをするどころか、学問の楽しさを満喫しながら灘中合格までたどり着くことができたのである。天才というわけでもなく英才教育を施してきたわけでもない我が子の能力をここまで引き出してくれて感謝である。

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